心の底から熱意を伝えること

私は子どもの頃に読んだ新聞記事を今でも大切に保存しています。その記事のように、人の心を突き動かすような文章を書きたい、読んでもらいたい、そして伝えたい、この新聞社の記者になりたいという夢を持ち続けていました。でもそれは、ただの漠然とした夢のようなもので高校時代に出会った先生の影響でその夢はすこしづつ変化をして大学への進学へのは教員になるための教育大学へと進学しました。

人に教えるためにはまず自分自身がしっかりと学び、得ていくことだと勉強に取り組んでいきました。そして大好きな新聞は必ず毎日よんでいました。そんな学生生活を送っている時、気が付いたのです。私は本当に教師になりたいのかということ、そして「教える」ということに私は向いていないのではないか。教えてもらうこと、そしてそれを伝えていくことが本当は好きなのではないかということです。そのことに本当は少しずつ気づいていました。それでも、今ある目標に向かって学んでいこうという気持ちがあったのでどこかで気が付かないふりをしていたのでした。

そして自分の本心に正面から向き合おうと思ったのが就職活動を始めた時でした。新聞記事の中に見つけた採用情報でした。その記事を見た瞬間、「私の夢は新聞記者になることだった」と気が付きました。そして、応募しました。バブル景気も全く知らない「失われた10年、ロストジェネレーション」「就職超氷河期」と言われた時代の就職活動。マスコミの勉強を全くしていない私。私の夢は叶いませんでした。そんなに甘くはないのです。

私には教師は向いていない、真っ白な子供たちの心に色付けをしていく手助けをする教師にはなれないという思いもあり一般企業へ就職しました。それでもやはり夢は諦めません。「またやってみよう!!」その新聞社には社会人採用試験というものがあります。企業で働きながら勉強をしました。それでも、世の中の人たちはもっともっと勉強していたのでしょうね。1年目、2年目、3年目。私の夢が叶うことはありませんでした。

どこかで区切りをつけなくてはならない、という思いもあり今回で最後にしようとまたもや採用募集に応募。面接ではいろいろな角度から質問がされます。私の中で「最後」という思いがありこの先ここに来ることができないのかもしれない、これが何かしらの思い出になるのかもしれないという気持ちになっていました。

正直、何を質問されてどう答えたのか、覚えていないことがたくさんあります。若手(30代くらい)の社員の方との面接でも、私と同じ女性で若く、きっと優秀でバリバリ仕事をしていて自分の書いたことが記事となっているんだろうなと思うと、「面接」というよりも私の「憧れの存在」となり、こんな風になりたいという気持ちがその社員の方に重なってしまっていたように今思うと感じます。

そして、必ず聞かれる「どうしてこの会社なの」という質問です。私は、子どもの頃に読んだ記事のことを話しました。漢字が少しずつ読めるようになったような小学校低学年頃。中東で湾岸戦争が起こりました。その湾岸戦争が起こる前日の夕刊社会面に載っていた記事のことを話しました。その記事には「戦争は悪いことだ、やってはいけない」とは一言も書いていません。砂漠で戦争に備える米軍兵士の話でした。

それに付けられた見出し。『もっと一緒の時を』。家族ともっと一緒の時を過ごすべきだった、私の死後は再婚してほしい、子供たちにこのプレゼントを渡してほしいという記事。『流れるのは僕らの血』。戦争で死んでいくのは自分たちだという記事。そこには記者の方の感情は書かれず、出来事のように淡々と書かれていました。それでも子どもながらに衝撃でした。付けられた見出しも忘れられません。記事のどこにも戦争反対のことは書かれていません。それでも絶対にこの戦争は起こさせてはならない、戦争は何一つ良いことを生み出さないと思いました。こんな小さな子どもにも伝わる記事が私をその新聞社の記者になりたいという夢を持たせてくれたのです。

その話を一生懸命語りました。中東で特派員として取材していた記者の方の名前を子供の頃からしっかりと覚えていました。そして最後に「私はこの記事を書いた方に会いたいです。たとえ、入社できなくてもいつかこの記者の方に会って、こんな記事を書ける記者になりたいと夢追い続けてきた」と話したいです。と、言いました。するとしばらくして「その記者は私です。」と、聞こえました。私の前でお話をする面接官の一人でした。驚きました。記事のことを力説してしまった後に目の前でご本人と会うだなんて。「たとえ、入社できなくてもいつかこの記者の方に会いたい」と目の前で言ってしまった・・・と、まるで好きな人に告白をしたかのように恥ずかしかったです。

その方はとても有名な伝説の記者であり、その時は役員でした。その気持ちが伝わったのかどうか未だにわかりませんが、入社することができました。入社してわかったことは、社員の方みなさんのレベルの高さです。これについていくにはこれからまだまだ勉強をそして経験を重ねていかなくてはならないと思っています。どんなことでも気持ちを強く持って、熱意を伝えることが就職活動のみならず人と人とが繋がっていくためにとても大切なことだと実感しました。